第3段『不倫』

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不倫
バックミラーを覗くと可愛らしい女性がハンドルを握っている。 丸メガネの似合う小動物系の女の子。 髪型は肩にかかるくらいの長さである。 あぁ、僕のタイプだ。 バックミラーがもっと大きければいいのに。と、思いながら既に角度が合っているバックミラーを触る。 フロントガラスに光が反射してハッキリと見えない。 世間では結婚をした後に他の人を愛してしまうと不倫という肩書きを持つことになる。 今でもテレビを観ると、あの俳優と女優が不倫した。という誰の為にもならないニュースが流れている。 結婚した後も人を愛してもいいのか?と、妻子を持つ男性を少し羨ましく思ったりもするが、結局は誰も幸せになっていない。 互いに儚い結末を知っているが、やめられないくらい不倫の瞬間は楽しい。こんな事を言うと「お前は経験があるのか?」と問いただされそうなのでやめておくが、結婚をしたら誰も人を愛せなくなるというのは、人間を辞めた気にもなる。もちろん、生涯この人だけ。と決めたのなら素晴らしく思うが、何やら周りの目を気にして始まる結婚生活も少なくない様だ。それは、自らの足で感情の墓場行きであるフライング・ダッチマン号に乗船している気分にもなる。 僕にそんな勇気はないが、人から愛されることを異常な程に喜ぶ。そんな性格だ。 好きと言われて嬉しくない人はいないだろう。 僕を好きでいてくれる人は、僕も同じくらい好きだ。 どういう人が好きでいて欲しいかをバックミラー越しに考えている。 そして、いま見つけたのだ。 この女性はどんな男性が好みなんだろう。 気持ちが悪いと思うが想像してしまう。 これが男なのだ。丸メガネのレンズから見えるものは全て素晴らしいものであってほしい。 羽生結弦であったり、福士蒼汰に見えてほしいと思う。想いが届くのなら長柄町の竹林のような強く立派な男に見えてほしい。 バックミラーは投影機であり、夢を映すこともあるが、期待とは裏腹に現実も映す事がある。 千葉市中央区から重い重いハンドルを握って茂原まできた。 これが軽くなったのは、いつからか。前ばかりみていたら気づかない出会いだった。『バックミラーの恋』と名付けよう。あぁ、確かここら辺からだ。